ポル・ポト政権下での壮絶な日々を記した手記

 

僕がカンボジアへの旅行を決めた大きな理由は,キリングフィールドやテュール・スレンを見に行きたいと思ったからです.

そして,実際にカンボジアへ旅行に行くまでに,2冊の本を読みました.今回紹介するのはそのうちの一冊の本です.

 

概略

本の題名は『地獄の一三六六日 ポル・ポト政権下での真実』という本で,ポル・ポト時代のサバイバーの一人であるオム・ソンバットさんの日記です.ページ数は500ページほどで上下の2段構成となっており,かなりのボリュームがありました.

 

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この本は当時の生活について知るうえでかなり貴重なものです.というのも,ポル・ポト政権下では知識人は弾圧の対象であり,眼鏡をかけていたり手が柔らかいということでさえも処刑されるには十分な理由でした.また,所有の自由などは認められておらず,当時のことを紙に記していることが発覚すればそれも処刑の対象でした.そんな時代の中で,オム・ソンバットさんはセメントの紙袋や紙の切れ端などに出来事をメモしており,このメモをもとにこの手記を発表しました.もしこのメモが見つかっていたら,と思うとぞっとします.

 

作者であるオム・ソンバットさんはポル・ポトが政権を取った時には家族と首都のプノンペンで生活をしていました.そして,4月17日にクメールルージュがプノンペンを占拠し,地獄の日々が始まります.

 

まずプノンペンに住んでいた人々は全員農村部へと強制移動を命じられます.老若男女,病人や傷害など関係なく,全員が移動を強制されました.この移動中に体力のない老人や子供たちの多くは栄養失調や病気で亡くなりました.オムさんも両親や2歳の姪をなくしています.

それから過酷な重労働の日々が始まります.食べ物がなく飢餓状態に陥っている中で虫や雑草などを食べて飢えをしのいだり,一日に16時間の労働をさせられるなど,当時の生活がどのようなものであったのかを知ることができます.

 


本の感想

僕がこの本を読んで思ったことは,「ポル・ポト」という文字が500ページの中で一度も出てこないという点です.事実,ポル・ポトは政権が崩壊する直前まで人民の前に出てくることをしていませんでした.当時の人々は何もわからない中,急な政権交代やその後のクメールルージュによる圧政という過酷な日々を生きていたことがよくわかります.

また,直接的な処刑についての記述は思っていたよりは多くありませんでした.何か悪事(極限の空腹状態で食べ物を盗んでしまうなど)を働いた人は突然消えるということが起こっていました.これが実際に生活をしていた人が見た光景でした.この消えた人々は,テュールスレンのようなSecurity Centorにに送られ拷問を受けた後キリングフィールドで処刑されたのだと思います.

 

本の入手方法

僕は大学の図書館でこの本を見つけたのですが,Amazonなどでは入手が難しそうです.

一応,次のホームページから書籍をダウンロードすることができることを確認しました.

http://www.daido-life-fd.or.jp/business/publication/publish/cambodia/cambodia2.html

ダウンロードされるものの拡張子は.epubで,これを読み込めるソフトウェアを別途用意する必要がありました.この辺りに関しては次のホームページを参考にしてください.

https://www.appleach.co.jp/2017/04/210/

僕はchrome拡張機能であるReadiumを使って本が読めることを確認しました.

https://chrome.google.com/webstore/detail/readium/fepbnnnkkadjhjahcafoaglimekefifl/related?hl=ja